研究会活動

テーマ;大阪地裁平成26年10月31日判決(仕組債)

開催年月日 平成26年11月21日  報告担当: 松田繁三弁護士

報告内容

テーマ;大阪地裁平成26年10月31日判決(仕組債)

【事案の概要】 原告は60代男性の会社代表者で、資産収入等はかなりあった。平成19年2月に30年債(本件仕組債①)、同年5月6月に株価指数2倍連動債(本件仕組債②③)を購入させれられたところ、②は1ヶ月で途中売却して利益を得たが、①は保有したまま時価評価大幅下落、③はノックインして元本0となり、大きな損失を被ったもの。

 

【判決内容】
1 本件仕組債①について
  商品特性について、「米ドル又は豪ドルの円相場が円安方向に推移すれば早期償還 となって元本(円貨)に加えてその20.30%のクーポンを取得することができ、円高方向に推移すれば、固定クーポンは別にしてクーポンを取得することができないまま満期(30年)まで本件仕組債①を保有し続けた上、満期時に元本が米ドル又は豪ドルで 償還されてその時点における為替相場により元本(円貨)が毀損されるリスクを負うものであって、一般投資家にとって理解がさほど困難なものということはできず、また、一般投資家の負うリスクも主として為替リスクであるところ、早期償還条件が2年経過後のクーポンの累積額が元本(円貨)の0.20%という低い水準に設定された上、満期が30年という長期に設定されていることから、その間に為替相場の変動によって早期償還となる可能性も決して小さくはなく、一般投資家の負うリスクの程度は必ずしも高いということはできない」とした上で、適合性原則、説明義務違反ともに否定した。

2 本件仕組債②および③について
商品特性について「日経平均株価指数とも異なる東証銀行業株価指数または東証電 気・ガス業株価指数を利率および償還条件の指標とするものである上、早期償還条件およびノックイン条件が付され、ノックイン条件が満たされた場合には、当該指数の下落率の2倍の割合で元本が毀損されるというもので、その内容がやや複雑であって一般投資家にとって必ずしも容易に理解し得るものであるということはできない上、当該指数の変動如何によっては元本の全額が毀損されるという大きなリスクを負うものであるが、ノックイン条件が当初指数の約70%という低い水準に設定されているなど、対象株価指数の下落にも一定程度の耐性を有しており、そのリスクの程度は必ずしも高いということはできない。」と判示し、適合性原則違反は否定。
しかし、「ノックイン条件を満たした場合に投資家の負う元本毀損リスクは大きな ものであり、この点が本件仕組債②および本件仕組債③のもっとも重要な商品特性およびリスクである」とした上で、「投資家に対し少なくともノックイン条件およびノックイン条件が満たされた場合のリスクの内容、程度について十分に理解させるに足りる程度の説明をすべき義務を負う」と判示し、本件においては、原告の理解を得るに必要かつ十分な説明を尽くさなかったものとして説明義務違反を肯定した。
さらに、本件仕組債③について、原告社長は、「利率は変動するものの、その満期に元本全額が償還されるいわゆる元本保証の商品であると誤信して、これを原告会社または原告社長において購入した」と認められるところ、「本件仕組債③のノックイン条件およびノックイン条件が満たされた場合のリスクは、そのもっとも重要な商品特性かつリスクであるから、本件仕組債③の購入に係る契約において、原告社長には、本件仕組債③の最も重要な商品特性およびリスクに関する錯誤があり、この錯誤は当該契約の要素の錯誤に該当する。」と 判示して、錯誤無効を肯定した。

3 認容額について
説明義務違反についても過失相殺を問題としていない、
説明義務違反による不法行為に基づく損害賠償請求の方が、錯誤無効による不当利 得返還請求よりも、弁護士費用を加算した分認容額が大きくなるから、損害賠償請求で認容した。

【報告者のコメント】
 元本保証の説明については、当初から主張していたが、文書提出命令申立の結果、任意で電話記録、接触履歴が提出されたところ、この電話記録を基に、元本保証を基調とした勧誘、勧誘時の担当者の主導性などがいっそう明らかになり、また同時に、接触履歴に虚偽記載や不正確な記載が多いことも明らかになった。

そこで、元本保証の説明や接触履歴の虚偽の点などに重点を置き、証人尋問においても、その点を強調したことが功を奏して上記結論となった。