研究会活動

テーマ;大阪地裁平成25年11月21日判決 (適合性原則違反・説明義務違反・過失相殺3割)

 

開催年月日 平成25年12月12日  報告担当:松田繁三弁護士 

報告担当:松田繁三弁護士 

報告内容

事案の概要 

平成18年8月から平成20年8月にかけて、外貨建日経平均連動デジタル・クーポン債を13回、EB債を1回購入した原告が、被告(岡三証券株式会社)に対し、①錯誤無効、②適合性原則違反、③説明義務違反に基づき、不当利得返還または損害賠償を請求した。なお、合計14の本件各仕組債のうち、6つが早期償還したが、8つが元本欠損した。

判決内容

1 本件各仕組債の商品特性
様々な条件の成就状況に応じて購入者が受ける利益や被る損失の内容が変動するという仕組み自体が複雑であり、7年先あるいは2年先までの将来の株価や為替の動向を予測しつつ、利益、損失の内容を的確に把握した上でこれを購入するか否かを判断する必要があるなど、相応の専門的な知識経験を備えていることが求められる商品である。また、本件各仕組債は、最大限元本全額の損失まであり得るという重大なリスクの存する商品であり、高リターンにより得られる利益に比しても非対称となっている。
2 原告の投資属性
原告は、平成18年8月当時73歳の女性で、商業高校を中退後、結婚を機に専業主婦となり、その後はアルバイトをしていた。原告には子がなく、夫と死別した後は一人暮らしをしていた。同月当時の原告の資産・収入としては、5階建てのマンションを姉と事実上共有して月20万円程度の賃料を得、別に月18万円程度の年金を得ていた。このほか、原告は1500万円の個人年金保険、190万円の預貯金、買付金額にして3200万円程度の株式を有していたが、一方で先祖の墓の整理に2000万円を要すると認識していた。
同月当時、原告は約20年にわたる株式等の取引経験を有していたが、証券会社の担当者等が勧めた商品を購入する傾向が見受けられ、原告の収入および資産に照らせば、高リスクを承知で高リターンを得ることを企図するような投資意向を有していたとはいえない。
3 錯誤
本件各仕組債における元本割れのリスクの存在は、売買契約の要素になっているが、リスクが存すること自体は一応説明をしていたと認められるため、原告の意思表示に要素の錯誤が存したと認めることはできない。
4 適合性原則違反
最高裁平成17年判決を踏まえ、上述の本件各仕組債の商品特性及び原告の投資属性に照らし、適合性原則に反する。
5 説明義務違反
証券会社は、信義則上、当該投資商品の仕組みや危険性等について、顧客がこれを具体的に理解することができる程度の説明を、当該顧客の投資経験、知識、理解力等に応じて行う義務を負う。被告の担当者は、原告に商品内容やそのリスクを一定程度説明していたが、高利率を強調して購入の勧誘をし、元本割れのリスクについても、現実化する可能性は低いと思われる旨の相場観を述べており、原告に本件各仕組債が有する危険性を具体的に理解させる程度の説明であったとはいえず、説明義務に反する。
6 過失相殺
原告の投資経験、知識に照らし、過失割合を3割とする。

報告者コメント

被告担当者の反対尋問により、原告の主張の相当部分を認めさせたことが勝訴につながった。平成18年から19年ころ、仕組債はほとんど早期償還しており、いた。そのため、被告担当者も早期償還する可能性がかなり高いと認識し、顧客にも個人的な相場観としてそのように話していた(有利性の強調)という証言を引き出した。