研究会活動

テーマ;適合性原則について

報告者:王冷然准教授(徳島大学)
報告内容:適合性原則とは何か?説明義務との関係は?
-既往と最近の学説・判例に見られる論点を踏まえて-

報告内容

はじめに

  王准教授は、「適合性原則と私法秩序」(2013年、信山社)を執筆された。

今回の研究会では、その王准教授に「適合性原則とは何か?説明義務との関係は?-既往と最近の学説・判例に見られる論点を踏まえて-」というテーマでご講演いただいた。
概要は以下のとおり。

適合性原則の内容

① 米国における適合性原則の内容(FINRA規則2111.05)
・合理的根拠適合性義務(商品熟知義務)
・特定顧客適合性義務(顧客熟知義務)
・量的適合性
② 日本における適合性原則の内容
・従来は、顧客の属性と商品のリスクを相関的に判断。
・現在は、合理的根拠適合性についても一定考慮されるようになったが、商品または投資戦略に対する勧誘者の理解の程度は問題視されていない。

適合性原則に関する学説の状況

①1999年までの理解状況
顧客の属性に照らして当該顧客に適合する投資取引を勧誘すべし(多数説)


②1999年の金融審議会における理解
・狭義の適合性原則
ある特定の利用者に対しては、どんなに説明を尽くしても一定の商品の販売・勧誘を行ってはならない
・広義の適合性原則
業者が利用者の知識・経験・財産力・投資目的に適合した形で商品の勧誘・販売を行わなければならない


③1999年以後の理解状況
・一般の禁止規範として適合性原則を捉える見解
・排除の論理として適合性原則を捉える見解
特に潮見佳男教授の見解では、狭義の適合性原則=資力・判断力の乏しい投資不適格者を市場から排除する論理、広義の適合性原則=指導・助言義務(説明義務ではない)とされる。


④王准教授の見解
・適合性原則を広義・狭義に区別するべきではない=適合性原則一本化
→個々の顧客の属性に応じて当該顧客に適合する投資取引を勧誘すべし
・潮見説では、顧客の投資目的が考慮されず、資力・判断力の乏しい顧客しか保護されない。助言・指導義務は説明義務に比べて高度的。

適合性原則と説明義務の関係

①両者の具体的内容
適合性原則:投資取引が当該顧客の需要に相応しいのかの判断を業者に要求
説明義務:顧客に投資商品の情報を提供し、理解させることを業者に要求


②両者の役割
適合性原則:投資対象の適否の判断により顧客の事故決定の範囲を選定する
→顧客の自己決定を積極的に支援する(支援アプローチ)
説明義務:情報提供により顧客の事故決定の環境を整備する
→顧客の自己決定基盤の形成を補完する(情報アプローチ)


③両者の不可代替性
・業者がいくら説明しても、自らの勧誘行為の「適合性」の判断には関係ない
・顧客側が最終的に投資するかどうか決めるには、「適合性」の判断だけでは足りず、情報の提供も必要
・両者は代替できないので、説明義務の延長として「広義の適合性原則」を捉えるべきではない