研究会活動

テーマ;投信乗換事案判決(大阪高裁平成25年2月22日)

報告者:大濵巌生弁護士(当会会員)
報告内容:投信乗換事案判決(大阪高裁平成25年2月22日判決)

報告内容

事案の概要

 1.事案の概要
原告(控訴人)は、高齢で一人暮らしの女性であり、平成17年には認知症等により成年後見の審判を受けていた。その後、平成19年に後見審判の取り消しを受けたが、その直後から投資信託やEBの乗換売買をさせられた。当該取引について、①適合性原則違反、②説明義務ないし助言義務違反、③無意味な反復売買・乗換売買を理由として、不法行為に基づく損害賠償請求を行った事案である。原審は、請求を棄却したため、原告が控訴した。

判決内容

(1) 本件判決は、投資信託の内容について、投資対象やリスクについて詳細に認定し、また、原告の生活状況についても、介護認定の際に作成するケアプラン作成資料などにより詳細に認定している。
(2) その上で、本件判決は、後見開始が取り消されてからも主体的な判断で証券取引等を行うことが不可能な状態であった、満76歳という高齢で一人暮らしの控訴人に対し、相当のリスクがあり、理解が困難な本件取引を勧誘し、投資させたものであり、控訴人の意向と実情に反し、過大な危険を伴う本件取引を勧誘したものであるといえるとして、適合性原則違反による不法行為を認めた。
(3) 説明義務違反について、本件判決は、商品の仕組みの概要やリスク、コスト等の基本的な情報について、一応の説明はしたと認められるとしつつ、担当者の勧誘により、相当なリスクを有する投資信託などを買い付け、しかも比較的短期間の保有日数で投資信託の乗換売買が繰り返されるなど、相当に積極的な投資判断に基づく取引が行われているのであるから、担当者としては、控訴人に対し、新たに取引の対象とする商品の内容、仕組み、投資方針、リスクの質と程度についてはもちろんのこと、乗換売買を行うに当たっては、売却する各商品の状況及び通算の損益状況、手数料等の顧客が負担する内容等、乗換売買を行うことのメリット並びにデメリット及びリスクについても、控訴人の属性等を踏まえ、控訴人の取引意向に沿うべく十分に説明して理解させる義務があったとした。その上で、本件ではそのような説明がされたとはいえないとして、説明義務違反を認めた。
(4) 無意味な反復売買・乗換売買の点については、各乗換売買において、損失が出ていない状況での乗換であること、リスクが高い商品の乗換であること、控訴人の投資意向に沿ったものとはいえないこと、などから各乗換は合理的な乗換えとはいえないとした。
そして、1度を除き、全て控訴人が損失を被っている上、手数料率が比較的高額であることを考え併せると、担当者は、控訴人の利益を犠牲にして、自己の業績を上げ、あるいは会社の利益を図ったものと推認するのが相当であるとし、不法行為の成立を認めた。

(5) なお、本件については、2割の過失相殺がされている。

報告者コメント

本件判決は、適合性原則に関する最判平成17年7月14日判決をデリバティブを含まない投資信託にも適用して適合性原則違反を認めた判決として意義がある。
外務員に対する尋問では、すべての乗換売買について、乗換の不合理さを示すような要素(例:乗換の必要がないなど)を確認するなどの工夫をした。