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テーマ;30年物為替連動債(私募)+3年物EB債(私募)判決

報告者:山崎敏彦弁護士(当会会員)
報告内容:30年物為替連動債(私募)+3年物EB債(私募)判決
〔大阪地判平成25年2月15日〕〔証券会社:三菱UFJ・MS証券〕
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報告内容

事案の概要

 1.事案の概要
原告は、昭和32年生まれ、一人住まいの女性であり、平成18年までは父を承継した兄(以下、「A」という。)の法人の理事として、年額約100万円の給料を受け取っていたが、平成19年以降は同収入なし。
原告は、本件までに2億円程度の投資信託や株式等を父から贈与を受けたり、Aに買ってもらったりして所有していた。無駄遣いが多いという理由で、原告の金融機関届出印は兄が預かっていた。
しかるところ、Aは、三菱UFJ銀行に原告の資産運用について相談し、同銀行が系列化の被告をAに紹介した。原告は、本件30年物為替連動債および本件3年物EB債を購入したが、Aが、もっぱら原告の代わりに話を聞き、確認書に署名、捺印等をしていた。以下、単に「30年債」「EB債」と略称する。

判決内容

(1)まず、Aの関与につき、適合性原則違反及び説明義務違反の判断については、投資判断主体であり効果帰属主体である取引主体の意向や実情等を基準とすべきであり、被告においては代理人制度がなく代理人による取引についてそもそも許容されていなかったのであるから、原告を基準とすべきとした。
(2)本件各債券の商品特性として、
①本件30年債について、購入者は、償還期限までの為替相場の変動状況や発行体の存続可能性を見越して、償還条件や利子の条件が有利か否かの判断をすることになるが、償還期限が30年と極めて長くしかもその代金が1億円と高額であるため、上記判断を相応にすることは個人の一般投資家にとって著しく困難であるとし
②本件EB債について、購入者は、経済状況、株式市況の動向に関心を払い、3年後の株式市況の動向を予測した上で、途中売却が困難であるというリスクを取りつつ購入すべきか判断しなければならない主体的積極的な投資判断を要する投資商品であり、リスクの高い投資商品であるとしたうえで、
顧客適合性ある投資家は、
③少なくとも上記リスクを理解するに足る知識・能力と、その危険を引き受けるに足る余裕資金を有する者に限られるとした。
(3)それに対し、原告の投資属性として、
①原告は、EB債の説明を受けた際にも全く理解できていないことが分かる発言をいくつもしており、投資判断するだけの能力に乏しく(被告担当者もそのことを認識し得た)、
②原告に積極的な投資経験や知識はない、
③投資意向について安定志向を有していた、と事実認定した。
(4)その上で、原告が被告との取引開始にあたり、たとえ多額の資産を有している旨を申告していたとしても、適合性原則違反が認められるとした。
(5)同様に説明義務違反も肯定。

(6)過失相殺については、原告はAの関与を認識しながら容認していたが、原告においても、被告担当者の勧誘に軽々に従わず、納得するまで説明を求め、あるいは取引を拒否することは可能であったとして、原告の過失割合4割を認めた。

報告者コメント

  (1)30年債の商品特性について、適合性原則違反を認めたに止まらず、適切な投資判断をすることは個人の一般投資家にとって著しく困難としており(一般的適合性なし)、本件原告に限っていない点に意義がある。
(2)審理においては、これまでの裁判例などを多数引用したものの、事案の性質に鑑みて(原告の投資属性)、難しい構造論などはしていない。