研究会活動

テーマ;中小事業者の外為デリバティブ取引被害の解決事例報告

開催年月日:平成24年12月13日

報告者;今井孝直・古川幸伯・重次直樹・吉岡康博(いずれも大阪弁護士会所属弁護士で、大阪証券問題研究会の会員)

報告内容

1. 中小事業者の外為デリバティブ取引被害の解決の実例(1) …今井孝直会員・古川幸伯会員より

1) 通貨オプション取引事案では、相手方がメインバンク等で融資取引がある場合、今後の取引を考えて、訴訟ではなく、まずはADRを選択することも考えるべきである。
複数行と通貨オプション取引をしていても、一部の銀行だけあっせんの対象にすることは可能である。
2) FINMAC(*)も、全国銀行協会(全銀協)の場合と同様、手続きを迅速にする進めるため、ヒアリングシートが導入されており、期日も原則1回である。(*)証券業協会系
3) あっせん対象は、原則として未払金と解約返戻金のみを対象とし、確定損は対象とならない。
そのため、申立に先立って弁護士名で内容証明郵便を送付し、通貨オプション取引の決済停止を申し入れた方が、あっせんの対象が広がる。
ただし、債務不履行には変わりないので、依頼者には、決済を停止することのメリット、デメリットを説明し、判断してもらう必要がある。
4) あっせん手続ではヘッジニーズとヘッジ比率がポイントとなる。
輸入業者で為替取引がある場合でも、実質的に為替変動リスクを負っているかどうかは、実際の商流や商品価格に転嫁できているのかどうかを検証し、資料をもって立証するべきである。
ヘッジ比率=年間為替量(プットオプション)/年間輸入債務だが、銀行よっては、年間輸入債務の内容として、直接貿易だけでなく、商社取引(間接貿易)も入れた主張をすることもあるので、要注意である。
5) ADR一般について言えることであるが、あっせん時に決めるのは負担割合だけであり、実際に解約手続きをしたときの為替レートで負担額が確定することに注意する必要がある。
あっせん時よりも解約時に円高が進行していれば、負担額が膨らむことになる。

2.中小事業者の外為デリバティブ取引被害の解決の実例(2) …重次直樹会員より

1) 全銀協には、銀行業務をカバーできるメリットがあるが、大阪にあっせん委員がいない。
そのため、東京に出向くか、大阪で電話会議することになる。
FINMACでは、大阪において、相対で、書類交付して説明することができる。
2) ADRは新分野であり、あっせん委員による判断にも差異があるように思われる。
そのため、争点を絞らずに、グラフなども利用して主張できる点はすべて主張することが肝要ではないか。

3. 外為デリバティブ取引被害における最新の韓国判決の紹介…吉岡康博会員より

 ソウル中央地方法院第21民事部判決を吉岡弁護士が翻訳した。
この日は要点の報告があった(*)。
(*)この判決の内容については、後日改めて、時間を取って検討される予定である。
第1 事案
KIKO通貨オプション売買の事例
バリアオプションの代表的な形で、特定通貨の一定額を、一定期間内又は特定の日に、あらかじめ定めた為替レートにより、他の通貨を対価に購入又は売却する ことができる権利(通貨オプション)に、ノックインバリアとノックアウトバリアが合成されている場外派生商品。


第2 判決の要旨
1) 金融投資商品の仕組みが複雑でリスクが高いほど、また、投資者と金融機関の間における情報の非対称と専門性の差異が大きいほど、説明義務はより高い精度で要求される。
2) 説明義務の範囲と程度は、投資者が組成された金融投資商品の詳細な金融工学的な構造と内容まですべてを理解できる程度でなくてもいいが、少なくとも、 その商品にどのようなリスクがあり、そのリスクが現実化する要因や条件は何か等、投資者自身の理解と直接的に関連がある主要な内容については、
「投資者がその商品を販売する金融投資業者の認識とほぼ同じ水準で認識できる程度」
に説明しなければならない。
そして、説明した後、投資者が理解できていないと判断される場合、再度説明する手順を踏まなければならず、投資者が負担するリスクに関連する部分について 最終的に投資者が理解できない場合には、当該商品をその投資者に販売することは適合性の原則に反するか、自己責任の原則を適用することはできない。