研究会活動

テーマ;「店頭デリバティブ取引の登場と投資勧誘の適法性」

開催年月日:平成24年11月8日

報告者;志谷匡史教授(神戸大学)

報告内容

1. はじめに 

 志谷教授は、「投資者保護の現代課題」(商事法務1912号4頁)の続編として、「デリバティブ取引に係る投資勧誘と適法性」(商事法務1971号4頁)を執筆された。
 今回の研究会では、その志谷教授に、「店頭デリバティブ取引の登場と投資勧誘の適法性」についてご講演頂いた。
 その概要が以下のとおり。

2.投資損失を巡る紛争の歴史

昭和40年代          商品先物の客殺し商法
昭和50年代~60年代    豊田商事事件に代表されるような詐欺的取引
平成に入ってバブル期からバブル崩壊後
              株式などの伝統的な有価証券
              ワラント投資やEB投資
              最近のデリバティブ投資

3. 投資勧誘の適法性の判断枠組み

 ①適合性原則
 ・最判H17.7.14までは裁判所は「狭義の適合性原則」(ある特定の者には、いかに説明を尽くしても一定の商品の販売・勧誘をしてはならないという ルール)として理解し、あてはめをしていたのではないか?仮にそうであれば、適合性原則違反で違法が認定されるケースは限定的に。
 ・最判H17.7.14は、適合性原則違反のみで違法性を基礎づけうることを明らかにしたが、依然として違法性が認定されるハードルは高い。
 ②説明義務違反
 ・被勧誘者の属性に応じた説明が求められる(適合性原則と説明義務の融合)。また、商品(内容の複雑性)に応じた説明が求められる。
 ・多くの事例では説明義務違反の有無・程度が勝敗を分けることになる。

4. デリバティブ取引の登場がもたらしたもの

①市場デリバティブ取引(最判H17.7.14の事例)
   違法性が認定されるケースは限定的?
②店頭デリバティブ取引(最近の事例)
  ・デリバティブの理解
    形式は伝統的商品の衣を着ている。形式ではなく、実体として理解すべき。
  ・違法性の判断枠組みに変化をもたらすか?
    →可能性 (ⅰ)適合性を安易に肯定しない。
         (ⅱ)説明義務遵守を強く要求する。
         (ⅲ)より基本的な変化は期待できるか?
  ・デリバティブ取引の賭博性
    業者が組成すれば常習賭博罪は免れるが、賭博的な性質は払拭し難い。公序良俗違反(民法90条)と考えられる余地は?
    →射幸心を煽るというだけでは難しい。
  ・業者の顧客配慮義務(最判H17.7.14の才口補足意見)
    一定期間契約関係が続くと考えると、契約関係解消の機会を投資者に与えるべきではないか?ただし、契約関係解消のコストは考えておく必要がある。